【2/3】元妻が風●で働いてる。悪びれる様子もなく話してくるので、お前程度のテクで商売になるのか?と返してみた。数ヶ月前まで夫婦だったのに、この会話ってなんなんだw
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57: 賢治:04/05/20 08:24 ID:uni6Cu+T平成12年10月21日、信じられない光景を目の当たりにした。「もう少し横、そうそう・・そこそこ」台所に立っていると後ろでそんな声が聞こえた。振り向くとまだ安定期にも満たない妊婦の通代が、うつ伏せにになって 子供に腰を踏ませている。「うわぁ、何やってんだ!」通代は涼しい顔で面倒そうに立ち上がりながら「大丈夫だよ、今までだって結構無茶しても何ともなかったんだからさ」そうは言うがそれにしても無頓着が過ぎる。「一応、明日病院で診察してもらうんだぞこの、バッカヤロー」「はいはい・・」通代はまた面倒そうに髪をかき混ぜた。58: 賢治:04/05/20 09:14
ID:uni6Cu+T次の日に通代から仕事場に電話があったのは午前10時過ぎの事だった。「ごめん、ダメだったみたい」心の準備をさせるでもなく、さらりと言いのけると「すぐに掻き出さないといけないみたなんだけどさ・・やって貰ってもいい?」あまりに現実離れした報告に言葉も詰まった。「ちょ、ちょっと待て、今日やらないかんのか・・」「いや、ダメだダメだ・・今日はやめろもう一日だけ待って貰え、いいな!」「明日になったら、何かが起きるかもしれない・・その可能性だってあるんだ」根拠のない希望にしがみつき、必死に不安をかき消した。59: 賢治:04/05/20 09:40 ID:uni6Cu+Tその晩は子供とじゃれる気持ちにもなれず子供が寝た事を電話で確認してから帰路についたが・・その足取りは重かった。途中、夜半の蓮華寺池公園に立ち寄りベンチに座るともう、堪えきれず涙があふれた。我が人生さえも責めた。いい加減に生きて来た事への報いなのか・・・。これがもし、失った子が八人の中からであったらその悲しみは計り知れないぞ・・そのような警鐘にも思えた。「ダメだ、今帰ったら通代をどんなにか責めてしまうだろう」そう気がつくと池の周囲をゆっくりゆっくりと歩いた。11月が近いとはいえ相変わらず非常識な静岡の気候はこの時間になっても程良い温度で幸福そうな一組が水際で眠りについていたガチョウをひやかしていた。
60: 賢治:04/05/20 10:07 ID:uni6Cu+T生命とは不思議なものだ・・。確かに八人のどの子供を妊娠している時にも通代の無茶はあった。点灯を始めた歩行者用信号に慌てて走り出し、大きなお腹を上下に揺らしたり・・日常の不満からボトルを空けた事もあった。それでも望まれた子供は強く、無事に産まれて来てくれたのだ。今回は、親のあまりの仕打ちに自分は望まれてないと小さな生命が判断したのだろうか。いずれ通代にとってはただの「苦い記憶」だったのか、またそれにも及ばない出来事だったのか・・。結局決定的な処置を施したあの日を通代が思い出す事はないのだろう。61: 賢治:04/05/20 13:08
ID:uni6Cu+T月日は刻々と通代に、その決断の時を迫っていた。「賢治が復縁してくれなんだら堕ろす」という、脅迫にも近い通代の言葉は・・私の胸中を量っての事だ。「知った事じゃない!俺には関係の無い話だ」気持ちの動きを悟られぬよう、間髪を入れずそう答えた。何という会話であろうか。その生命は普通に時間を経過さえすれば、この世に一人の人間として存在する事が出来るのだ。しかも通代とは、いや私の子供達とも同じ血も分けているのだ。63: 賢治:04/05/20 13:49
ID:uni6Cu+T何が引き留めているのかはともかく決断しかねている通代の肩を強く押す人物が話し合いに加わった。「あんたのお腹にいるのは、人間の子じゃあないんだよ!」「そんなもん、産んでどないするのぉ!」通代の母親の剣幕はひどいものだった・・。これからの娘の人生を思えば、親としてある種の正論なのかもしれない。だがそこには、同じ「親」として通代に伝えるべきものは何もない。人間としてと言うのなら尚更の事だ。しかし・・・自分一人で決めずに、実母の後押しでという気楽さも加わってか・・通代は堕胎を決断したのだ。64: 賢治:04/05/20 19:45
ID:VQ0LnRSP「今、堕ろしに来てるんだけどさ・・」通代からの電話に胸がエグられる思いがした・・一言も何も言わずに受話器を置いた、何も聞きたくはなかった。その、物言いに不愉快を極めた。しかし通代である・・電話はまた鳴った。「聞いて、あのね・・」「仕事中だ!切るぞ・・」「あのさ心音が一つじゃあないんだって」「え・・・・」「双子なんだって、どうしよう」65: 賢治:04/05/20 21:18
ID:zW8rQGEO「おっ前なー!」耐えて耐えて、耐えに耐えた感情が一気に噴出した。近くにあった本棚を蹴り上げ声を荒げた・・「お前はなんでそうやって俺に連絡するんだよ!自分一人では何にも背負いたくないのか!」仕事場に居合わせた人間の目などもう、どうでもよかった。「双子だなんて聞いたら俺がどう思うかなんて・・お前にもわかるだろうよー!」「知らん知らん!俺は知らんぞー!」私の人生には、常にそれを傍観するもう一人の私がいた。それが故に我を忘れるという事は、この時まで経験のない事だった。66: 賢治:04/05/21 08:35
ID:44ozYj6D頻繁にあった通代からの連絡が途絶え何日かが過ぎた。我が家は相変わらず慌ただしい毎日であった。私の仕事場は旧東海道沿いにあり、仕掛け人シリーズの梅庵の生地とされていた。商店街は私のような余所者にも感じられる人情があり・・・四季折々の和菓子をつくっている時が幸せだ、と言って目を細める和菓子職人がいた。頑固一徹で七十代に届いてもガリガリ働くが、他人をよく褒める茶卸業者がいた。嫁姑の話題を得意にし、看板娘の座に君臨し半世紀の御所がいた。私はこの商店街での買い物が好きだった。昼休みにはここで買い物をし午後の仕事の合間に夕食の下準備などをした。