【6/8】嫁が静岡市に出かけた。用があって嫁に電話すると、バックに駅の構内放送が聞こえた。 “4時??分発 中津川行きの急行が…” 路線を調べても静岡にいないことは明白だった。
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89: 中津川 ◆jIzn4ThRRKxt:2011/04/08(金) 20:22:11.54 ID:ミンミンは、嫁の怒りに燃えた視線に対して、嘲笑を浮かべた表情で、ふざけた感じで言い放った。 「何言ってるのよ、自業自得でしょ?普段からろくなことしてないからこうなるんじゃない、バカじゃないのあんた」 嫁は目をギラつかせながら「覚えてなさいよ、絶対に後悔させてやるから」と吐き捨てるように言うと踵を返して 「あの、少しお話を」と必死で声をかける興信所員の言葉を無視して立ち去ってしまった。 嫁の、あまりに激しい剣幕に、誰も引き止めることが出来なかった。 しかし、この展開は、俺たちにとってはかなり予想外で、興信所の人たちも困惑していた。 仕方なく、事の成り行きと、嫁の豹変振りに心底驚いた様子で、無言のまま固まっている上司から話を聞くことにした。 しかし、上司は我に帰ると、忙しいだの、この後予定があるだの御託を並べて、何とかこの場を立ち去ろうとした。 しかしミンミンの「ご協力いただけないなら、場合によっては裁判とか早い話、表ざたにしますよ」という恫喝に屈して、 すごすごと、近所のファミレスまでついてきた。もうガックリと、濡れた犬みたいにしょげ返った感じで。 90: 中津川 ◆jIzn4ThRRKxt:2011/04/08(金) 20:23:19.41 ID:30代後半の上司の話は、ごく普通の、どこにでもあるような話だった。 職場が同じだから、だんだんと親しくなった。いけないと思いつつも、積極的な嫁に引きずられてこうなってしまった。 ただ、これが初めてで、もうこれっきり嫁とは縁を切るつもり。 どうか内密に、穏便にすませて欲しい。家族(奥さんと子供二人)には絶対に知らせないで下さい。
まあこんな感じで、俺が言うのもなんだけど、どこにでもいる気の小さな会社員といった感じの人だった。 質問は、ほとんど興信所の人がしてて、たまにミンミンが口を挟む感じで、俺はただ黙って聞いてた。 会話は録音された上で、事のあらましを自筆で書かされて、署名捺印のうえ上司はやっと帰された。1時間弱ぐらいかな。 そして、興信所の人とミンミンが少しだけ今後のことの打ち合わせをして、彼らも帰っていった。 後に残ったのは、ミンミンと俺だけになった。俺はなんか、惨めで情けなくて言いようの無い自己嫌悪で落ち込んでいた。 はっきりと自分の目で、嫁の現実を見てしまったせいだろうと思う。 ただ、そのせいで本当の意味で吹っ切れた気はした。結局俺は、嫁と結婚して一緒に暮らしてただけで、嫁のことが何にもわかってなかった。 はっきりと、嫁とは終わりにする覚悟みたいなものが出来たと思う。きっとミンミンは煮え切らない俺に、 腹を決めさせるために、現場を直接俺に見せることに拘ったんだと思う。 そして、彼女のその考えは正しかった。俺はこのなんとも心寒い今夜の体験をしなければ、未だに心を決めかねていたかもしれない。 92: 中津川 ◆jIzn4ThRRKxt:2011/04/08(金) 20:24:17.83 ID:ミンミンも、不慣れな経験で多分すごく疲れてたと思う。それでも彼女は明るく振舞って、いろいろな話題をふってくれてた。 俺は正直、そんな彼女の気配りのおかげで随分救われてたと思う、それと1人じゃないってことに。 性格はまあ置いておいて、外見は、こんなに若くて、もの凄く綺麗な女性に慰められてる俺は、最高に幸せなサレ夫なのかも知れない。 ミンミンは、自分のマンションから車で10分ほどの場所の、彼女の会社が管理している、家具つきの賃貸マンションを俺のために 用意してくれていた。俺の身の置き場が決まるまで、2ヶ月ぐらいなら居ていいって言ってくれてる、家賃はただで。 時間も12時を余裕で回っていたから、ミンミンは途中で酒とつまみを買って、その部屋で一緒に飲もうと提案した。 俺も、見知らぬ部屋に1人で帰ったって、とてもじゃないけど眠れそうになかったから、喜んで同意した。 そして、俺たちがまさに席を立とうとしたその瞬間に、俺の背後を見つめたまま、ミンミンが固まった。 俺は、何事かと思い振り返ると、こちらに向かってつかつかと歩いてくる、嫁の姿が見えた。 93: 中津川 ◆jIzn4ThRRKxt:2011/04/08(金) 20:25:21.94 ID:嫁は俺たちの席までやってくると、ミンミンは一切無視して、ニッコリと俺に笑いかけて言った。 「あなたはきっといろいろ誤解してるはずだから、これから一緒に帰って話しましょ」 「きちんとあなたが納得できるようね説明させて、お願いだから」 「この女狐に、あることないこと嘘八百吹き込まれてちゃダメ、私を信じて」 「あなたのことはこの私が一番わかってるんだから」 俺は驚きと、何故だか妙な恐怖で言葉を失って、呆然と嫁の顔を見ていた。 すると、驚きから立ち直ったミンミンが、キッと嫁を睨みつけて 「ちょっとあんた、この期に及んでまだ言い逃れする気?いい加減にしなさいよ。」 しかし嫁は動じることなくなおも俺に、早く一緒に帰ろうと迫る。