彼女にデートを断られ、一人でウィンドウショッピングを楽しんでいると、ガラス越しに彼女の笑顔が見えた。そしてその隣にはダンディなおじ様が彼女の腰に手を回してた!

今から行くから!とメールで返事をよこし、こっちへ向かっているようだった。
俺はPCから彼女と、あの家族の関連写真を消し、
カメラからメモリを抜き取って、新品のメモリを差し込んだ。
やがて彼女が来て、壁にはってる写真を見て、
わぁ、すごい!と感嘆の声をもらしていた。
やっぱコンデジと違うねぇと彼女。俺は俺の腕がいいんだよと冗談を言う。
いつもの楽しい時間。偽りなんだけど、俺にとっては本当に楽しい時間だった。

彼女はカメラを貸してくれと言った。俺は大事に扱えよと貸してやる。
「あれ? 何も映ってないじゃん」
「あぁ、PCに全部入れたからね。メモリは空にしたんだ」
「PC見せて!」

彼女は俺がどんな写真をとったのか気になったようで、
ビュワーを立ち上げ次々に見ていく。
風景写真が映った時、彼女が「ここって、○○らへん?」と尋ねてきた。

「そうだよ、よくわかったね」
「うん、なんとなくね。写真はこの辺しかとらなかったの?」
「うん、だいたいこのあたりだけだねぇ… 違う所も撮ったけど、消しちゃった」

なんとなくわかった。彼女が浮気した現場近くだったんで、
焦っているのだろうと。彼女の心が見えた気がして、ちょっと楽しかった。

746: 
恋人は名無しさん 2008/10/16() 19:13:28 ID:lJES/6/D0
晩飯にピザを頼んで、お腹いっぱいになった所で軽くいちゃいちゃ。
いつも俺から求めてたけど、拒否されたりで最近レスだった。
なのに、今日は彼女から求めてきた。やましい気持ちがあったからだろうか。
久し振りだったので燃えた。燃え尽きた。
いつもは彼女へ愛を囁きながらするんだけど、この時は俺は終始無言だった。
彼女はその事に気づいてたのだろうか。

彼女を家に送り、俺は上司に電話を入れた。
明日、遅れる、もしくは休みを取りたいと。
比較的まじめ君だった俺は、上司に許可をもらう事が出来た。
心配もされたけれど、言いたくなければ事情は言わなくていいと言われた。

俺は隠してたカメラのメモリをすべてPCにうつし、あの写真をプリントアウトした。
明日、この写真をもっておじ様のところへ行く為に。
そして、不倫をばらされたくなければ、彼女と別れてほしいと交渉するために。
脅迫罪なんて観念は全くこの時なかった。

749: 
恋人は名無しさん 2008/10/16() 19:16:42 ID:lJES/6/D0
次の日の朝。
俺はいつもより早く起き、びしっとスーツで身を固め、
交渉アイテムをカバンに詰めておじ様の家へタクシーで向かった。
車、持ってないんです…。

おじ様の家には母子が乗ってた車と、見慣れない車がもう一つ。
おそらくおじ様が通勤に使う車だろう。

7時半くらいだろうか。俺は勇気をふりしぼり、チャイムを鳴らした。
インターホンから女性の声。
俺は本名を名乗り、だんなさんを呼んでもらう様頼んだ。
今思えば、奥さんに出てこられたら俺顔知られてるからヤバかったかもしれない…

玄関から物音がし、ドアがあいて、ひょこりと男が顔を出した。
パジャマ姿だった。スーツすがたの「おじ様」という風貌は、まったく感じられず、
不精ひげをそのままにしたその姿は、どこにでもいる「おっさん」だった。
おっさんは、のそのそと出てきた。俺は自己紹介をした。
「はじめまして。○○とお付き合いさせていただいている××と申します」
おっさんのふ抜けた顔が引き締まった。不精ひげとパジャマはそのまま、おじ様になっていた。
おじ様は外に出てきて、玄関のドアをバタリと閉めた。

750: 恋人は名無しさん 2008/10/16() 19:18:58 ID:lJES/6/D0
おじ様は無言だった。
俺は直に言った。「彼女と別れてください」
そして写真を取り出し、おじ様に見せた。
おじ様の顔はこわばり、小さく唸るような声で「わかった」と言ってくれた。
俺はそのまま立ち去ろうとした。するとおじ様は俺を呼びとめた。
「妻へは…」
この人も自分の保身が大事なんだなと思った。
俺は彼女に近づくなとクギをさせれば、それでよかったのだが。
おじ様のこの言葉で、俺、ちょっといじわる根性が芽生える。

「僕はすごく辛い思いをしました。慰謝料を請求したいのですが…」
おじ様は、やっぱりかといった感じで大きなため息をついた。
「いくらだ…」
いくらなんて考えてなかった…
とりあえず、まえ買った望遠レンズが5万だったんで、これくらいならと思い、
俺は無言で手の平を相手に見せた。
「わかった… 少し待っていてくれ」
この時通報されてたら俺タイホだったと今思うwww

751: 恋人は名無しさん 2008/10/16() 19:20:26 ID:lJES/6/D0
おじ様が戻ってきて、封筒を俺に渡した。
5cmくらいあった。
中みて仰天。500万っすか…
別に婚約してたわけじゃないのに…
つか、家にそんな大金置いてるのが不思議。札束、帯までしてあったよ。
俺、怖くなって、封筒受け取ると逃げる様にその場を離れた。
おじ様、すまないって深く頭下げてたけど、どうでもよくなってたw

おじ様とはそれっきり。

きっと、家族3人で幸せに暮らしてる事でしょう。
公園で見たあの幸せオーラは、絶対壊しちゃだめだと今は勝手に思ってる。

んで、俺の彼女はというと…
おじ様が約束を守って別れをきりだしたかどうかは分からないけれど、
しばらくして、彼女がやたら甘えてくるようになった。
そして俺の心境にも変化が。
ぶっちゃけ、彼女の事がどうでもよくなってしまった。
最近、毎日の様に夜を求められて、最初の頃は嬉しかったんだけど、
今は俺の方から拒んでしまう。
なんとなく、昔彼女が俺を拒んだ理由がわかった気がした。

◆修羅場◆スレ休憩所23
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