「私は、過去にあなたを裏切り不倫をしました」嫁は泣きながら言った。俺は耳をふさぎたい気分だった。謝罪する嫁に「知ってたよ」と言った。そう、俺は全部知っていた。
もちろん息子は動揺していたそれでも、しばらくすると俺が家にいる生活にも慣れ始めたそして、俺の家には笑い声が増えていった顔を合わせなかった息子は、今日学校で何があったか俺に楽しそうに話し、嫁はテレビでこんな話を聞いたと自慢げに語って来た俺はそれが嬉しくて、笑顔で話を聞いた嫁と寝室で寝る時、嫁に言った「これからは、嫁を本当の意味で幸せにする。愛してるよ」嫁は泣きながら、私も愛してると返したそして、俺と嫁は息子に気付かれないように注意しながら、毎晩のように愛し合ったこうして俺の家族は、なんとか持ち直したそんな時、嫁が買い物に行った後、家で荷物整理をしていた時、とあるスケジュール帳を見つけた見たことがなかったものだったから、パラパラと中をめくってみた嫁の字で色々書かれていて、それは嫁のスケジュール帳だと分かったそしてその中に、とある単語が日付の横に書かれていたハートで囲まれた、Kという文字それが、週に数回程書かれていたそれはちょうど、俺が仕事に没頭していた時期俺は、瞬時に理解した嫁が、不倫をしていたことを俺は怒り狂った嫁が帰ってきてから、問い詰めようと思っただけど、考えてみれば俺が嫁を寂しくさせていたことは事実だったし、当時は嫁との夜の生活は全くなかった寂しさのあまり、他の男に走るっても仕方がないのかもしれないそんな風に思えてきたそしてスケジュール帳は何冊もあったが、ある日を境にKという文字は書かれなくなっていたそれは、ちょうど俺が異動した時期その月のスケジュール帳には、途中までKという文字が書かれていたが、途中からはKに×印が付けられ、それ以降Kという文字は書かれていなかっただから俺は、それを密かに元の場所に戻したそして、見なかったことにしたもちろん完全に忘れることは出来なかったそれから、俺はしばらくEDとなったその時嫁とは毎晩関係があったから、嫁は凄く心配していた俺は仕事で疲れてるだけだからと説明した嫁は、俺の体を色々と気遣い始めた過去の不倫を知られているとは、夢にも思わなかったようだ俺は必死に忘れようとしただけど、どうしても嫁の体を見ると思い出してしまったその度に心がざわつき、途中吐いてしまうこともあった地獄のような日々だったそれでも、しばらくしたら徐々に落ち着き、EDも直ったそして俺は、それを墓場まで持っていこうと思ったそれから月日が流れ、息子が高校を卒業した後、公務員試験に合格したそれは他県の公務員であり、それを期に一人暮らしをすることになった引っ越しも終わり、最後に豪勢な食事をして息子を見送ったその日の夜、家は久しぶりに俺と嫁だけになった何だか寂しくなったね、と、嫁は言ったそうだね、と、俺は返したそして、嫁に言った息子も一人立ちをしたこれまでの人生は、君のおかげで素晴らしいものだった一度忘れていた家族の大切さも、君のおかげで思い出すことができた自分にとって、君はかけがえのない大切な人だ本当に愛しているよそしたら、嫁は泣き始めた俺は嫁の体をさすり、なだめようとしたでも嫁は、その場で急に土下座するように座ってしまったそして、「私に、あなたからそんなことを言われる資格はない」と言い出した俺はその時、嫌な予感がした嫁に止めるように言おうとしたが、その前に嫁が言った「私は、過去にあなたを裏切り不倫をしました」
聞きたくない言葉だった思い出したくもないことだったでも、嫁は自ら話し出した〇不倫は、前の職場の上司だったこと〇向こうは遊びのようだったが、自分は本気で相手にホレこんでいたこと〇あなたと離婚して、相手と添い遂げようとまで思っていたこと〇しかし、あなたが異動を期に変わり、忘れていたあなたへの想いが溢れ、その人物と別れたこと〇本当は言うつもりだったが、あまりに幸せな日々だったため、それが失われるのが怖くて言えなかったこと〇言えないことで、ずっと罪悪感を抱えていたこと嫁は泣きながら言っていたそして、ずっと言えなかったことを謝罪したでも俺は知っていただから泣きながら謝る嫁に、「知ってたよ」と言った嫁は驚いた顔になったが、俺は「全部知ってた」とだけ言ったそしたら、嫁は更に泣き始めたそしてしばらく、家の中は嫁の泣き声だけになったそれから俺と嫁は話し合ったこれからどうしていくのかこれからどうすべきなのか話し合った結果、俺と嫁は離婚することになったもちろん俺の本意ではないただ、ここまで話した嫁の覚悟を考えれば、一度きちんとしたけじめをつける必要があると思った両親には相談しなかったすれば反対されただろうから、事後報告することにした次の日の夜、用意した離婚届をテーブルの上に出したまずは俺が名前を書くことにしたそしたら、これまでの嫁との生活が走馬灯のように頭を過った高校の時、照れながら告白したこと卒業式の日に、同級生にからかわれながら写真を撮ったこと就職祝いを一緒にしたことプロポーズの時に噛んでしまったこと披露宴の翌日に行った新婚旅行で、二日酔いでダウンしていたこと妊娠したことを知り、家で飛び跳ねて喜んだこと名前を考える時、二人で姓名判断の本を見ながら決めたこと嫁が出産をした時に、我が子を抱きかかえた時のこと色んな思い出が頭をめぐり、目からは涙が溢れてきた俺と嫁は、泣きながら離婚届に名前を書いた二人の字は奮えていたそして翌日、一緒に市役所に提出したこうして俺と嫁の23年間は終わったそれぞれの実家に話した時はかなりもめたが、最後には理解してくれた息子にも電話で言った息子は、「子供じゃないんだから、二人で決めたことに口出しするつもりはないよ」と言っていたそして今は、俺は一人になった家で生活していて、嫁は、じゃないな元嫁は、アパートを借りて暮らしているしかし、一度離婚して、意外にも色々とスッキリした面があった俺も心に抱えていたものが、こうして筋を通すことで、消えてしまったのかもしれない