妻は学生の頃、大学のゼミの指導教官だった准教授と不倫関係にあった。卒業後は切れていたが、二週間ほど前に飲みの席で再会し誘われ、これが最後と約束してホテルについて行った。
会話は堂々巡りし、怒りというより僕は途方に暮れていた。
夜になり妻は実家に帰るというが、ぼくは引き止めた。
このまま返せば結論が出てしまう。
その夜は、妻と抱き合って寝た。
妻の体は冷たく僕の腕の中でブルブル震えていたが、そのうち寝息を立て始めた。
その寝顔が安らかだった。
僕は一睡もせずに、何度も何度も繰り返し考えた。
自分はどうすべきか?
そして、翌朝、妻の入れたコーヒーを飲みながら、寝ないで考えた自分なりの考えを妻に伝えた。
22: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 12:19:51.56 ID:0.net
君とは別れない。子供は自分たち夫婦の子供として育てると。
昨夜の寝顔を見ていると、君が一人で背負っている重圧をとても放置できないと思った。
君が不憫だ。僕はどんなことがあっても君を支えたい。
君も僕といることが最も安心できるはずだ。
多分、うまく言えないが君を愛している。
妻は言葉もなく呆然と僕を見ていた。そして、ワッと泣き出した。
しかし、泣きながら、本当に貴方の申し出を受け入れて良いのか分からないという。
こんな自分を許してくれるのかと。
昨日から堕ろせとは一度も言っていない。
この気持ちは何なのかをずっと考え続けたと妻に言った。
君が守ろうとしている生命。
たまたま宿った生命を奪うことが良いことか?
そう考えると、許すとか許さないとかは念頭に浮かばなかった。
君は過去は消せないというが、子供を産みたいと言う君の気持ちの方が尊い。
多分、君が子供を堕ろすと言えば違う判断になったと思う。
23: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 12:59:30.71 ID:0.net
仮に離婚したって君は誰かと再婚することだってあり得る。僕だって再婚するかも知れない。
それなら、一時の過ちで離婚しなくてもいい。
2人で乗り越えればいい。
僕を信じろ、と言いながら妻を力いっぱい抱きしめた。
24: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 13:01:48.92 ID:0.net
その日のうちに義両親を訪ねて僕の結論を伝えた。
妻の子供を産みたいと言う意思を尊重すること。夫婦で子供を育てること。
義両親2人共に驚愕していたが、義父は、君は本当に自分の子供として育てられるのかと。
自分の子供が生まれたとしても、分け隔てなく育てることを約束できる。
この結論に至って、今の心境はむしろ清清しいくらいですと応えた。これは本心だった。
義両親共に涙を流した。義母に至っては声を出して泣いていた。
義父が至らぬ娘を許して欲しいと言うので、僕は妻の全てを受け入れましたと応えた。
妻の過ちは聞いたが、誰にも言うつもりはないしその相手に接触するつもりもないと宣言した。
これは妻との誓約だった。
義父は、将来、生まれた子供が自分の子ではないと伝えるかと聞いた。
一番難しい質問だった。必要に迫られれば伝えるが、基本は伝えないつもりですと答えた。
25: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 13:54:21.68 ID:0.net
その年のうちに妻は出産した。女の子だった。
出産に立ち会った。妻の苦しみと頑張りを見ていたら、僕は貧血を起こして倒れてしまった。
看護師は、付き添った夫が倒れることがあるという。笑い話にもならない。
赤ん坊はみな可愛い。僕に似ているという人もいたのには驚いたが、反面、嬉しかったのも事実だ。
しかし、3ヶ月もすると目鼻立ちが妻に似てきたので内心ホッとしたのも事実だ。
その頃、義両親も初めて孫を抱いた。その表情を見て僕はやはり離婚せずに良かったと思った。
26: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 13:55:40.19 ID:0.net
へぇ
27: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 13:57:00.44 ID:0.net
その後、男の子2人を得て5人家族になった。
子育ては難しいものだが、子供たちはそれぞれ個性を持ち始め、毎日、成長を見るのが楽しい。
将来が楽しみだ。3人ともこのまま立派に成長して欲しいと願っている。
長女は本当に自分の子供ではないのかとも感じている。
妻は今も自責の念が抜けていない。時々、そんな表情を見せる時があるが、口にすることはない。
3人の子供たちが一緒になって遊んでいる姿を見ると、誰の子なんて些細なことで、まさしくこれが家族だと思う。
長々と書いたが、10年経ったいま、自分の判断が正しかったと改めて思っている。
28: 名無しさんといつまでも一緒:2015/04/17(金) 22:47:44.40 ID:0.net
慰謝料で準教授を痛めつけると思いきや。
言いたかったのは、誰の子なんて些細なことで、てことだね。
ご立派。



