【4/4】送られてきたカセットテープを再生した。「千春は悪い子だねえ・・ほらイク前に彼氏の名前言ってごらん?」「ごめんね良ちゃん・・ごめんねえあぁぁぁぁぁ!」彼女の声だった...
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【4/4】
443 : 良介 : 03/07/04 17:02 ID:sjh1JPwQ
「あの子がお前を裏切ったんだろう。あの子から聞いた。
随分自分を責めていたぞ。」
「そうだ。裏切りは許せない。それがなぜ教える事に繋がる?」
「いいか?年頃の女の子がそれを話すのにどれだけ勇気がいったか解るか?
しかも相手の父親にだ。俺はそれに応えただけだ。」
「・・・そんなの知るか」
「それに俺は教えないなんて約束してないぞ。
約束したのは母さんだろ?」
「ガキみたいないい訳するな!」
444 : 良介 : 03/07/04 17:04 ID:sjh1JPwQ
「お前はあの子が好きなのか?」
「関係ないだろそんな事」
「好きなら度量を持て。相手を許せる度量を持て。」
「・・・・好き勝手言いやがって・・」
「まあ たまには帰ってこい。以上!」
突然電話が切れた。
それにしてもこちらから電話しているのに”以上”で締めくくる親父には呆れた。
446 : 良介 : 03/07/04 17:05 ID:sjh1JPwQ
しばらく公園を歩いた。会社に戻るまでにはまだ十分な時間がある。
”度量”
頭の中に親父の言葉が残っていた。
千春が好きか?
−−−考えるまでも無い。好きだ。
千春と出会った事を後悔しているか?
−−−していない。
それなら千春を許せるか?
−−−・・・・・・・・。
自問自答を繰り返す。
いつになっても答えは出てこなかった。
447 : 良介(マジでごめん) : 03/07/04 17:08 ID:sjh1JPwQ
気がつくと既に5時を回っていた。
私は会社に戻る為、駅まで歩く。
駅に着くまでも着いてからも考えるのは千春の事ばかりだ。
ホームに勢いよく電車が飛び込んでくる。
お前の生き甲斐は何だ?
−−−以前は千春。今は・・・。
もう一度千春に会いたいか?
−−−会いたい。
千春が好きか?
−−−好きだ。大好きだ。
私はやっぱり千春が好きだ。
451 : 良介(マジ謝罪) : 03/07/04 17:11 ID:sjh1JPwQ
目の前の電車のドアが閉まる。
それは私をホームに残し、ゆっくりと動き出した。
気がつへくと私を乗せた電車は自宅の最寄駅へ向け、
既に走りだしていた。
許す許さないはもうどうでもいい。
私は千春が好きだ。
千春を失いたくない。
千春、千春、千春。
もう千春の事しか頭に浮かばない。
452 : 良介 : 03/07/04 17:14 ID:sjh1JPwQ
駅を出ると、自宅まで走り出した。
千春はまだ部屋にいる。
そう自分に言い聞かせ、全速力で走る。
自宅へ着くとポストにわき目もふらず玄関まで走る。
ドアノブを勢い良く回した。
・・・しかし、ドアは開かなかった。
ポストへ向かった。
震える手でポストのつまみを掴む。
まるで怖いものでも見るかのように、ポストの中を覗き込んだ。
2つ折りになったメモ用紙が見える。
そしてその上に私の部屋のカギが置いてあった。
453 : 良介 : 03/07/04 17:17 ID:sjh1JPwQ
メモ用紙を手に取り、開いた。
千春からの最後のメッセージがそこにあった。
”ありがとう良ちゃん”
カギを握り、部屋へと戻る。
私は携帯電話を握っていた。
アドレス帳には千春の名前は無い。
一番忘れてはならない電話番号を忘れた。
いや、アドレス帳に頼りすぎて、初めから覚えてなど無かったのだ。
458 : 良介 : 03/07/04 17:27 ID:sjh1JPwQ
アドレス帳から千春との共通の友達を探す。
千春を知る私の男友達は、千春の電話番号など知るはずもない。
そして私が知る千春の女友達の電話番号は私は誰一人として知らない。
千春の自宅へは行ったことが無い。
千春は両親と同居の為、会うのはいつも私の自宅だ。
どの町に住んでいるかは知っている。
ここから電車で大凡一時間の所だ。
しかしそこから千春の自宅を探しだすのは至難を極める。
それなら駅で待ち伏せしてみたらどうだろう?
通勤時間を狙えば千春は現れる筈だ。
しかし、千春が会社を退職している事に気づくまでそう時間は掛からなかった。
460 : 良介 : 03/07/04 17:30 ID:sjh1JPwQ
テレビの上に千春からもらった誕生日プレゼントの紙袋があった。
中身を空ける。中から新品の財布が出てきた。
私は高校時代から財布を変えた事がない。
就職して千春に何度となく変えるよう薦められた。
私の財布は、社会人が持つ財布ではないとの事だった。
私はもう使い古してボロボロの財布から、
千春がくれた真新しfい財布に中身を入れ替える。
入れ替えながら涙が止まらなかった。
462 : 良介 : 03/07/04 17:33 ID:sjh1JPwQ
ふと、千春が尋ねて来た時の事を思い出した。
”良ちゃんのお父さんから聞きました。”
千春は親父から聞いてこの住所を知った。
もしかしたら親父が何かを知ってるかもしれない。
465 : 良介 : 03/07/04 17:36 ID:sjh1JPwQ
また親父が電話口に出た。
「千春から電話番号とか聞いてないか!?」
「誰だそれは?」
「この間親父が住所を教えた女の事だ。連絡先知らないか?」
「そんなの知る訳ないだろう。」
「・・そうか。」
「なんだそれだけか?」
「・・ああ。それだけだ。んじゃあな」
「何だお前は・・ああそういえば昨日その子から何か届いたぞ。
お前に電話するの忘れてたな。」
「それを早く言え!そこに連絡先書いてあるだろう!」
466 : 良介 : 03/07/04 17:38 ID:sjh1JPwQ
「ああそうか。でもそんなの取っといてあるかなあ。」
「早く探せ!」
「それが人に物を頼む態度か!」
「いいから早くしてくれ!」
親父は舌打ちして、乱暴に受話器を置く。
その様子が受話器を通して耳に伝わってきた。
遠くで母親を呼ぶ声がする。
親父が戻ってくるまでの時間が待ち遠しい。
467 : 良介 : 03/07/04 17:42 ID:sjh1JPwQ
「おう、あったぞ。」
「教えてくれ!」
私は親父が読み上げる千春の自宅の住所と電話番号を書き留めた。
「ところで何が届いたんだ。」
「ああ何かえらく高級なチョコらしいな、確か”デコバ”とか言う・・」
「”ゴディバ”じゃないのか?」
千春は私をはじめ家族全員が甘党である事を知っていた。
「ああそれそれ。母さんが喜んでたぞ。
後で手紙書くって言ってた。お前からもお礼言っとけ。」
「わかった。悪かったな。」
468 : 良介 : 03/07/04 17:44 ID:sjh1JPwQ
「用事はそれだけか?いいなら切るぞ。」
「親父」
「何だ」
「今度帰る時何か買ってってやる。何がいい?」
「めずらしいじゃないか、そうだな・・んじゃ”万寿”がいいな。」
「マンジュ?」
「久保田の万寿だ。酒屋に行ってそう言えば解る。」
「わかった。買ってくよ。」
「母さんの奴、最近徳用の焼酎ばっかり買ってきやがんだよ。
未だに酒と焼酎の違いが解ってない。
お前からも言ってやってくれ。」
「まあ仲良くやってくれ。んじゃあな。」
何も言わず親父から電話を切る。これが親父の悪い癖だ。
この3週間後、まるで親父に騙されたかの様に財布の中身から1万3000円が消えていった。