嫁と知らない男が腕組んでマンションに入って行くのを見た。俺は右手に包丁、左手に数本のナイフを持って物音のする寝室向かった。
「●●っ?! えっ?」
ズボッ、と音たてて包丁を引き抜く。
安物の軽いドアだとこういう時楽。
男はなんか「あわわっ」とか言ってた気がする。
「いや、何やってるかは言わなくていいや。見れば分かるし」
「違うのっ、あの、これは……」
引き抜いた包丁を左手にナイフと一緒に持ち替えて、
ナイフを一本右手に。
「そういえばさ、一回やってみたかったんだよね。
ほら、サーカスとかでよくやる奴」
「は?」
「投げナイフ? ナイフ投げて顔すれすれとかに突き立てる奴」
右手のナイフの一番下持って、男に向けて狙いを付けてみる。
「や、やめっ」
言葉になってないし。
よく考えたら、素人が食事用のナイフを投げたって
まともに投げれっこないってことにも
気付くと思うんだが、俺も向こうも冷静じゃなかったから。
「とりあえず、あと10秒したら投げるけどどうする?」
そしたら男はなんかうめき声出しながらパンツ履きだした。
558 :539:2005/10/03(月) 01:12:38 ID:D9EK9OAh0
「服着てる暇あるの? あと5秒しかないよ?」
そう言って一旦ドアのそばから離れてやる。
リビングのソファのとこに男の鞄みたいなのがあったけど、
俺がその前に立ってるせいで
結局パンツだけで家飛び出してった。
男が飛び出していった後、鍵かけてキッチンに包丁とナイフを置いて寝室に戻った。
沙織は
まだ全裸でベッドにへたり込んでた。
「あのさ、順番違くない?」
「え?」
「いや、さっきの奴が好きになったんなら、
まず俺と別れてからじゃないの?ってこと」
「違う! 違うの!」
「何が? だって俺と別れる前に違う男と付き合ったら浮気じゃん。
それともさっきの男が好きなわけじゃないの?」
「うんっ、うんっ、好きなんじゃない。好きなのは●●だもん!」
561 :539:2005/10/03(月) 01:14:16 ID:D9EK9OAh0
「は? じゃぁ今までここでしてたことは何?」
「……ごめんなさい」
「質問の答えじゃないし」
「もうしないから許して? ね? お願い」
「……お前な、いいから質問に答えろ。
今さっきまでここでしてたことは何だ?」
「う、浮気、です」
「だろ? で、お前は許せと来た。
あのな、普通に考えて許せると思うか?」
「ごめんなさいっ、許してくれるならなんでもするからっ。お願い!」
この辺りで泣き出したんだと思う。
「そうやって今まで許してきたよな?
俺のカード使って20万使った時も、お前のせいで俺が親友と縁切られ
たときも。ほら、すぐ泣く。泣いたら許してくれるってのが間違いな
んだよ」
「はい……ぐすっ……」
「なんでもするんなら、とりあえず出てけ。
荷物は後で送ってやるから」
「いやっ、お願いっ。別れるのは嫌なの!
ごめんなさい!
ほんとにもうしないから!」
まだ泣いてる沙織は放っておいて、携帯取りにLDKに戻った。
562 :539:2005/10/03(月) 01:14:46 ID:D9EK9OAh0
プルルルル……5回ぐらいの呼び出し音で通じた。相手は沙織の御両親。
当時からお盆や正月どころか月一ぐらいの割合で御挨拶に行ってたし、
お義父さんとはよく酒飲みに行ってたので話は通じるし、
とりあえず連れて帰ってもらおうと思って。
「夜分遅く申し訳ありません、●●ですけれども」
「あら、●●さん、御無沙汰してます」
「こちらこそ御無沙汰しております。
お変わりなくお過ごしでしょうか?」
「お蔭様で。何か御用事?」
「いえ、こんなことを申し上げるのは心苦しいのですが、
先ほど家に帰って参りましたら
沙織さんが見知らぬ男性を家に上げておりまして」
「は?」
後ろで沙織が何か喚いてるが、無視。
「端的に申し上げれば、寝室で浮気の真っ最中だったものですから」
「……ご、御冗談、では、ないのですか?」
「申し訳ありませんが……」
563 :539:2005/10/03(月) 01:15:18 ID:D9EK9OAh0
あまりにも喚く声がうるさいので、通話口を塞いで「出て行くか黙るか
どちらかにしろ」と言うと黙った。
「それで、今は状況が状況なので、お互い冷静に話が出来るようにな
るまで沙織さんをお返ししようと思うのですが」
「そこに沙織は居るのですか?
いえ、1時間待って下さい。夫と一緒に伺いますっ」
「分かりました、お待ちしています」
確かに車で来れば沙織の実家からここまでは1時間くらい。
まぁそれぐらいは待っててもいいか、と思って待つことにした。
とりあえず沙織に服着させて寝室を掃除させて、
黙ってるのも何なので沙織と話をして御両親を待つ。
「さて、最初に聞きたいんだけど、さっきのは誰?」
「……会社の専務さん。
●●が出張だった時にご飯食べに行こうって誘われて……」
「ふーん、同じ会社の人、ね。で、今日が何回目?」
「あんなことになったのは……3回目。
2回目にご飯食べに行った時にお酒に酔って……」
「あ、そう」
564 :539:2005/10/03(月)
01:16:03 ID:D9EK9OAh0
「本当にごめんなさいっ!
もう絶対にしないから、だから……」
「でもさ、相手のことが好きなわけじゃない、
浮気したのもお酒に酔った勢いってのなら、
どうしてそれから2回も続いたんだ?
……2回ってのも沙織の言ってる事を信じれば、だけど」
「……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ごめんなさいだけじゃ分かんないし」
「たぶん……●●が出張が多くて寂しかったの……
●●のせいにする訳じゃないけど、
いつも二人で居る家に一人で居るのが……」
確かここで俺はすごい溜息をついたと思う。
「あのな、出張が多くて寂しかったのなら、
何故それを先に俺に言わない? 一回でも
そんなこと言ったことあったか?
さっき俺が“順番が違う”って言ったよな?
それも一緒じゃねーか」
「……ごめんなさい……」
「とりあえず、週末まで実家帰ってろ。
日曜まで色々考えてみるから」
「分かった……でもお願い、こんなことはもうしないし、
何でもするから別れるのは許して……」
そんな話をしてたら御両親が着いた。
565 :539:2005/10/03(月) 01:16:50 ID:D9EK9OAh0
俺が玄関先で出迎えたら物凄く丁寧に詫びられたけど、居間で沙織に
本当かどうか確かめた後のお義父さんのキレ方が凄かった。
いきなり沙織に思いっきり平手打ちするわ、倒れこんだ沙織を引きず
り起こして一緒に俺に向かって土下座しながら、フローリングの床に
沙織の頭ぐりぐり押しけるわ、お義母さんはお義父さんを止めるど
ころか一緒に土下座してるし。
上の文章読んでれば分かると思うけど、俺は基本的に人に暴力を振る
えなくてその分言葉で言うタイプなんで、目の前でそんなのを見せら
れるとつい沙織が可哀そうになってしまう。
結局 俺が土下座している3人をなんとかやめさせて、日曜日に迎えに
行くことを伝えて連れて帰ってもらった。
566 :539:2005/10/03(月) 01:17:49 ID:D9EK9OAh0
次の日、沙織の会社に“沙織がひどい風邪を引いたみたいで今週は休
ませてもらう”旨の連絡(沙織には予めそうすると言ってあった)を
入れ、それから日曜まで仕事中も家帰ってきてからも ずっと
どうするか考えてた。
沙織の言い分が自分に都合の良いだけだってことも分かってたし、
ここで許したらまた同じことになる可能性が高いのも分かってた。
ただ、沙織が言ってることが本当なら出張が多くて一人にすることが
多かった(とは言っても、家に居る時はずっといちゃいちゃしてたし、
週に3・4日はSEXしてたけど)俺にも、落ち度が全く無いとは言え
ない。
人生で一番悩んだんじゃないかと思うぐらい悩んだけど、
結局俺は沙織にもう一回チャンスをあげることにした。



