【2/3】間男とやってた嫁は「間男との別れ話は済んだんだよ。あんたんとこに帰るって言ったら間男は良かったねって... だから、お別れの前に最後にもう一回って...」とのたまったw
「賢治お願いだからまた、一緒にくらしてぇ!」
だが、お願いなんて言い方もこの時の私には
「それがあんたの為だよ」
という脅しの意味合いにも聞こえた。どうしてこの人物がこの街に現れたのか。通代の言葉ひとつで、どうにでも説明出来ただろうにと覚悟を決めた筈の私の気持ちがまた揺れた。
「座れ・・」
玄関先の台所の床に黙って正座をした。
「どういう事や・・」
と、間近から私を直視するこの人物にもはや・・
説明をする機会は与えられても、それを受け入れられる事はない。
72: 賢治:04/05/21 11:10
ID:44ozYj6D
「すいません・・」
何に対して頭を下げなければならないのか等、考える必要はなかった。ただただ、この人物の感情を逆撫でしたくなかった。
不思議なほど恐怖感はなかったが・・・
こうむる被害はやはり最小に押さえたかった。
「賢治・・通代が可愛そうや思わないんか」
私の反応を伺ったが、かわすしか手はなかった。
「本当に、すいません・・」
ひたすら、そう言い続けるしか浮かばなかった。
「すいませんやないんやー!」
と、蹴跳ばされた椅子が遠くに飛んだが
「あの椅子はいいな・・あれだけこの人物から離れればもう構われないだろうな」
そんな事を思うほど客観的な自分がいた。
76: 賢治:04/05/21 15:50 ID:72IzXu8u
「賢治よ、お前一度通代にヨリ戻すって言ったんだろぉ?」
そうなのだ一度してしまった約束を果たさぬのは例え、それが如何なる理由によろうとも、この人物の前では、それは明らかにこちら側の落ち度なのだ。
「すいません、申し訳ないす」
その台詞を繰り返しつつも、頭の中では何とか挑発せずに説明を出来ないものか模索していた。
「大体お前との生活に不満で、通代は家を出たんとちゃうんかぁ!」
突然、私の背後に回るとまな板の上にあった包丁を持った。
「おぉ、こらぁー!」
と威嚇しながら私の額を刃先で二、三度突っついた。傷は大した事もあるまいが血は大袈裟に流れた。
「やめてぇな!賢治、な、もう一度一緒に暮らそ!」
本気で止めるつもりもない、通代の芝居掛かった声が響いた。
77: 賢治:04/05/21 16:25
ID:72IzXu8u
「女を下げるなーっ!」
と通代を制止しながら・・・
「お前からヨリ戻せ言うたらな、お前の価値が落ちるんやでぇ」
そう通代をなだめた。
「なあ賢治、通代がまたお前と暮らしたい、言うとるんや・・それでエエやろぉ何が不満なんや」
「ホントにすいません、勘弁して下さい」
額の血は止まり、乾いて顔面の皮膚を引っ張った。
依然、その人物の右手には包丁が握られていた。
78: 賢治:04/05/21 17:31
ID:72IzXu8u
夕方になり保育園の迎え、そして夕飯の時間が近づいたが私はまだ通代のマンションに居た。お迎えと夕飯は、通代の母親が面倒をみてくれる手筈になっているのらしい。
こんな女であっても、通代が子供達にとっては母親であるのと同様に通代の母親もまた子供達にとっては、大事な存在なのだ。
感情の起伏が激しいこの母娘に私は随分罵られ八つ当たりされこの十年、過ごして来た。
79: 賢治:04/05/21 20:25
ID:72IzXu8u
平成三年三月・・
半年前に知り合ったばかりの通代との何かを急がなければならないように婚姻話が進められ決まった披露宴が行われた。
「女冥利につきる」
という通代の母親の発案で、新婦側の友人代表挨拶は通代が以前、好意を寄せ付き合った男という理解を超えたものであった。
それだけでも忘れ得ぬ出発となったであろうが
この日、この母娘に度肝を抜かれたのはその後だった。
お花のお師匠でもある通代の母がホテルで飾った花が使い回しだと怒りだしたのだ。
「出すもんは出しとんのや!なめたらあかんでぇ!」
絨毯に正座させた支配人の膝に、着物の裾をめくって足を置きすごむ通代の母親を、通代の親戚だけがニヤニヤ見守っていた。
80: 賢治:04/05/21 21:27
ID:72IzXu8u
「今日のお前んとこのおっ母、すごかったなぁ」
本来であれば、披露宴の翌日から仕事をすべき立場にあったこの頃であるが通代の母親に押しきられ温泉一泊だけの新婚旅行に来ていた。
「ああ、お母さんあの脚には太股んとこに薔薇を彫ってんねん、見せたがりやねん」
しかし・・
「今日はちょっと見えにくかったけど」
などと話すこの通代にもこの直後、更に驚かされる事になる。
夕飯も済み何度目かの風呂につかり、新婚初夜の晩をむかえた。
「ちょっとここに座って!」
もう布団も用意した後であり二人とも寝間着に着替えていた。
ふつつか者ですがと古風な挨拶でもあるのかなと思い布団の上に通代と向かい合って座った。
81: 賢治:04/05/22 11:18
ID:GqBGq/pz
「あんたね、この世で自分が一番強くて自分が一番偉いと思ってるでしょ」
言葉は聞き取れたが、言われている事の意味が解らずきょとんとしていると
「それはね、間違いだという事をこれから私が時間を掛けて少しずつ教えてあげるから」
通代はそう言うや否や拳を振り上げ躊躇わず私の顔面に振り下ろした。握った指の付け根の節で殴らずに肩たたきの如く、それでいてまるで釘でも打ち付けるように振り下ろしたのである。正座していた私はグラリ後ろによろめき、ギーンと頭が鳴ったが反射的に腕を支えにし、かろうじて倒れる事は防いだのだ。ドクドクと鼻から血が流れたが、何が何だか解らなかった。さっきまでは普通に会話をしていた二人で、ましてや数時間前に宴を終えたばかりの私達なのだ。
83: 賢治:04/05/22
12:35 ID:GqBGq/pz
鳩が豆鉄砲喰らったような顔、という表現があるが
この時の私と一体どちらが素っ頓狂な顔だったのだろう。
更に通代は間髪入れず二度三度と、今度はストレ-トを私の顔面に向掛けた。どれだけの時間私の思考回路は止まっていたのだろう。
「この野郎!」
我に返るなり立ち上がって通代を睨み下ろした。
「ふん!」
通代は怯むどころか予測の範囲とばかりに睨み返した。思わず通代の胸ぐらを掴み持ち上げ、布団の上に叩きつけた。通代は、すくと立ち上がり今度は私を投げようとする。幼少より柔の道を志した私を無謀な試みであるが、やられた事でやり返そうとする通代の執念と、そのあまりに必死な形相が熱くなりかけた私を冷静にするのだった。
84: 賢治:04/05/22
15:07 ID:MiM9FSlJ
確かにこの頃の私は仕事に集中する余りに、助手として勤めはじめた通代にきつかったかもしれない。
仕事上の妥協は我慢出来ず若さから周囲にもそれを強要した。見た目にはよく堪えていた通代が、まさかここでそれを晴らそうと考えていたとは思いもつかなかった。
「最初が肝心やしな」
と、後にこの晩の出来事を話す通代に
「俺もいきなり、こいつは侮れんと思ったよ」
と私も素直に認めたし、事実その後も常に振り回される結婚生活であった事は今更である。また、くどいようだがそれでも我が子等にとって通代は母でありそのまた母親は祖母である。子と母、祖母の関係を良好に保つ事は私自身の保身にもつながると信じ、気持ちを殺しそれに努める日々にもなった。
85: 賢治:04/05/23
13:16 ID:Q03+hbbn
通代が借りたマンションは以前、一度だけ勤めたアルバイト先の目と鼻の先にあった。不倫相手はそこの上司という、ありがちな成り行きである。最初、通代は不貞であった事を強く否定したが男はあっさりと認めた。途端に通代も弱気になった。
「じゃあ俺が迎えに行った時、なかなか出て来なかったのは中で、お前等がいちゃついてるのを待ってたのか!」



