【2/3】間男とやってた嫁は「間男との別れ話は済んだんだよ。あんたんとこに帰るって言ったら間男は良かったねって... だから、お別れの前に最後にもう一回って...」とのたまったw

黙って横目でお互いを確認する、二人のそれが言葉以上に答えていた。己のあまりの間抜けさにあきれる話だが、第三者から見ればどう考えても通代はとんでもない女である、 ・・さてしかし、そんな話がこの人物の同情をひきだせるものだろうか・・。
そんな事を思いながら、通代のマンションでの押し問答はまだ続いていた。何事につけ面倒な性分の私もここは、譲る理由にはいかなかった・・・・・・・僅かに残した自尊心をも譲る理由には。

私が拘束されてからもう七、八時間は経っただろうか。

86 賢治:04/05/23 15:57 ID:oTqN+v42
長い午後はなかなか終わらなかった。
予め長くなると解っていれば、こんなには頑張れなかっただろうと思う程、私の中ではこつこつと時間を積み重ねた。曲がりなりにも十年近く続けてきた親戚関係、私の客観的な落ち度、子供達に対する影響を考えると・・
「この人物が俺に出来る仕打ちは限度がある筈だ・・」
その思いだけを頼りに首を振り続けた。
「勘弁して下さい、(復縁は)無理なんす」
「賢治、また一緒に暮らすって言ってくれたじゃない」
「お前は黙ってろ言うとんのや!」
そんなやりとりが結局十四時間余りも続いたのだ。

87
 賢治:04/05/23 16:22 ID:oTqN+v42
朝方三時をまわった頃それまで包丁を突きつけたり蹴飛ばしたり威嚇的ばかりだったその人物も・・
流石に体力を消耗して来たのか急に、なだめ口調になった。
「なあ賢治、通代も反省しとんのや・・それでエエんちゃうんか!・・なあ?」
ここで活路を、見い出さねばとそれに応じた。
「自分も何が何でも許せないとか、そう言うのとちゃうんすよ」
「じゃあ何や、言うてみぃ・・」
今が絶好のタイミングだと見計らって、私の中では伝家の宝刀ともいうべき次の一言を放った。
「通代が、あの男の子供を俺んとこに戻って産みたいと言って来た時に、確かに一度は了承はしました」
でも・・と次の日にこのマンションで、事の最中であった二人に遭遇した出来事を持ち出した。
建前にしろ義理を語るこの人物である、私はその反応を待った。

88
 賢治:04/05/23 16:48 ID:oTqN+v42
「それが自然の流れというもんちゃうかぁ?」
私の切り札は気が抜ける程、事も無げに一蹴された。
「好き合うた二人が別れるんや、そうなるわい・・賢治、それぐらいの度量は持てや」
不倫相手の子をお腹にでも、帰って来いと言った私には度量が無かったのか・・・あまりに簡単に望みを絶ちきられ、この人物の言う事の方が 正論であるかのような錯覚さえ起こしそうであった。
この瞬間、私の気力は完全にその緊張の糸を切った。

「解りました、解りましたから帰らせて下さい」
意図とするしないではない思考の中から、私の口はそう、言葉にしてしまったのだ。

91
 賢治:04/05/24 08:18 ID:hs4FMmlH
私の、解ったという言葉を聞いて通代は
「ありがとう、ありがとう・・」
と言ったが危うく睨みつけそうになり、唇を噛んだ。
「賢治、顔洗いな・・」
と、タオルを差し出し洗面所を促す通代の手が私の背中に触れた・・・言い様のない怒りがこみ上げそうになるの堪え、一人洗面所に向かった。鏡に向かうと顔面を流れた血が固まり、ペンキのように剥がれかかったり、ジグゾーパズルのようにひび割れていた。閉めたドア越しに
「賢治、大丈夫かなぁ・・・」
と通代の声が聞こえた途端、私の目からドッと涙が溢れた。
「誰のせいで、誰がこんな目にあわせたと思っているんだ」
熱い熱い涙が頬を伝った。

うっすらと、私の中である決意が芽生え始めるのを感じた。
そして冷たい水で顔を何度も洗ううち、その決意が揺るぎ無いものに変わっていった。

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 賢治:04/05/24 08:48 ID:hs4FMmlH
自宅に向かうタクシ-の中で、もう私の気持ちは固まっていた。後は実行するのみだ、という意志以外の全ての思慮が・・まるで私には及ばない次元の力で排除されていく様だった。

住まいである公営住宅の、少し手前でタクシ-を止め歩いた。
理由もなく、全身のあらゆる感覚が鋭敏になってくる。
住宅の前では通代の母親がタクシーを待って立っていた。
「終わったらしいなぁ、子供はよう寝てるでぇ」
「御迷惑をお掛けしました、ありがとうございます」
「あんたも疲れたやろ、早よ寝ぇな」
「じゃすいません、お先します・・」
そんな会話を不思議なくらい、そつなくこなし階段を登っているとやがて車が止まり、走り去って行くのが見えた。ペッ!・・思わずそれに向かって唾を吐き、私は子供達の待つ部屋に向かった。

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 賢治:04/05/24 09:29 ID:hs4FMmlH
子供達はよく眠っていた。
今晩何があったのかなど関係のない寝顔にホッとした。
「俺も親なんだよなぁ・・」
と今更ながら実感した。
今までも確かに子供達は大切な存在ではあったが・子供の顔を見て癒やされるような父親ではなかった。日常の家事に追われ、本業にも向かう日々の中・・ いつも子供の持つ特有のエネルギ-に圧倒された。
時に子供を疎ましくさえ思う自分の中に、無償の愛があるべく親としての資質の欠如を感じていた。それだけに今、子供達の寝顔に癒やされる自分自身にもまた深く安堵したのだった。

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 賢治:04/05/24 10:05 ID:hs4FMmlH
時刻は夜明けをむかえ磨りガラスの向こうが白々として来たが私はゆっくり風呂につかっていた。
「疲れた・・」
それ以上の気持ちも、それ以下の気持ちも湧いて来なかった。身体のあちこちが痛み様々なアザが出来ていたが
「結構やられたなぁ・・」
それ以外の感想もなかった。

風呂から出て子供達の布団にもぐりこむともう全てがどうでもよくなった、薄笑いさえこみ上げて来た。

非日常過ぎた今日を終え、果たして眠れるものかどうか結論から言えば・・
「寝よう寝よう!」
誰に言うでもなく声に出して目を閉じた私はいつ以来であっただろうと思う程深く眠ったのだ。

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 賢治:04/05/24 13:20 ID:+JXUbxdQ
朝だ、その気配で飛び起きるといつもに増して手際よく朝食の用意をした。
「父ちゃん昨日どこいってたのぉ」
「いいのいいの気にすんな」
と、答えにならないあしらいをして朝食を摂らせその間に職場まで急いだ。昨日の昼に貼った貼り紙をはがし新たなものにした。
お客様各位
  本日の営業はお休みさせて頂ます
  誠に申し訳ありません
           店主
うまいぐあいに、誰にも声を掛けられずに済ませ家に戻り子供達を送り出した後・・・
「さて・・」
と、自分を促すように声を立ててから受話器を取った。

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 賢治:04/05/24 13:47 ID:+JXUbxdQ
「もしもし、ちょっと叔父さんに代わってくれるかな」
案の定御機嫌で「お早う」と澄ました声で電話に出た通代に告げた。

「賢治です昨日のお話ですけどもやっぱりもう、通代と暮らす事は考えられません」
目をつぶって、自分の声に集中しながら一気に宣言した。
「お前どないなっとんのや!」
「申し訳ありませんが・・」
「どう落とし前つけるんや!昨日の今日やぞ!」
「これからそちらに伺います」
受話器を置き、さあここからだと思うと身が引き締まった・・
昨夜の決意は、今朝になっても微塵も緩んではないのだ。
普段の行動は殆どが自転車であり、通代のマンションも自転車での行動範囲であったが車のキーをとった。途中で誰かに会い今の自分の顔を見られたくなかったのだ。

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 賢治:04/05/24 14:32 ID:+JXUbxdQ
出掛け先は勿論通代のマンションであるが、その前に寄らねばならないところがあった。自分の仕事場のある商店街を通り抜けながら、もう少しでここを離れる結果になるのかもと、そんな思いが頭をかすめた。